HACCPって何?

HACCP(ハサップ)は、元々はNASA(米航空宇宙局)が宇宙開発のアポロ計画を進める中で、宇宙食の安全性を確保するために考え出された手法です。

・・・宇宙飛行士さんが宇宙で食中毒にかかってしまったら大変ですもんね。

現在、国際的には、食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の合同機関であるコーデックス(食品規格)委員会が、HACCPの具体的な原則と手順(7原則12手順)を示し、食品の安全性をより高めるシステムとして推奨しています。

日本では、令和2年6月1日に「食品衛生法等の一部を改正する法律」が施行されました。

そして、令和3年6月1日までに全ての食品等事業者が「HACCPに沿った衛生管理」を実施しなければならないこと(法律施行後1年間は経過措置期間)になっています。

 
azard(危害)

A 
nalysis(分析)

and

C 
ritical(重要)

C 
ontrol(管理)

P 
oint(点)

それ、大変じゃない?

(写真提供/三良坂フロマージュ様)

HACCPは、ひとことで言えば「食の安全」を確保するための衛生管理手法のこと。
原材料の入荷から生産工程、出荷に至るまでの全工程を管理し「安全」を脅かす要因になるもの(なりそうなもの)を取り除きます。

つまり、

  • 「100%の製品が安全です!」(※注:保証する安全性が100%という意味ではありません)
  • 「安全に作られたという証拠(記録)もあります。」

・・・これこそが、HACCPの真骨頂!
でも、それって、すご~く大変じゃないの・・・?

いいえ。ちょっと思い出してみて下さい。
この頁を読んでくださっているみなさまは、実は、常にそういう思いで日々チーズを生産していらっしゃいますよね?
そして、実際に「チーズの安全」もコントロールされていらっしゃる。

ですから、これまで取り組んでこられた衛生管理の内容と大きくは変わらないはず

ここはひとつ、もやもやを解消するために、一歩前に踏み出しましょう!

あなたは、「どちらの」HACCP?

(写真提供/三良坂フロマージュ様)

令和3年6月1日までに全ての食品等事業者が取り組むことになった「HACCPに沿った衛生管理」には、「HACCPに基づく衛生管理」と、「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」2種類があります。

「HACCPに基づく衛生管理」対象事業者は、事業者自らが、使用する原材料や製造方法等に応じ、衛生管理の計画を作成し、管理を行うことになります。
他方、「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」では、業界団体が作成した手引書を参考に、簡略化された手法により管理を行えばよいということになっています。

「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」の対象となる事業者には、食品等の取扱いに従事する者の数が50人未満の小規模な製造・加工等の事業場等が該当します。(この他にも詳細事項が定められています。)

但し、対EU輸出をされる可能性が高い場合には、 HACCPに基づく衛生管理(ソフトの基準)に加え、輸入国が求める施設基準や追加的な要件(微生物検査や残留動物薬モニタリングの実施等)に合致する必要があります。

なお、<HACCPの考え方を取り入れた衛生管理>対象に該当しても、希望する事業者の方々は段階的に(あるいは初めから)<HACCPに基づく衛生管理>、さらに対EU・対米国輸出等に向けた衛生管理へとステップアップしていくことが可能です。

まずは、どちらのHACCPで取り組むのが妥当か、最寄りの保健所か地方公共団体HACCP窓口にご相談されるのが近道だと思います。

HACCPは取得するものではなく取り組むもの

とはいえ、「取り組み」って何をすればいいの?と、戸惑われるかもしれません。

毎日のチーズ作りで衛生管理に気をつけていらしゃることを、どういう目的(増やしたくない菌は何なのか等)で、どんな風に気をつけているのか(どういう方法で防いでいるのか)を明確にして取り組み、取り組んでいる証拠として日々記録します。そして問題に気がついた時に迅速に対応し、どう対処したのかも記録します。記録は保存します。
そして必要に応じて見直します。ざっくり表現するとそれだけです。

厚生労働省のホームページに掲載されている資料(「HACCPに沿った衛生管理の制度化」)によれば、

小規模営業者の皆様は、業界団体が作成し、厚生労働省が内容を確認した手引書を参考にして

①手引書の解説を読み、自分の業種・業態では、何が危害要因となるかを理解し
②手引書のひな形を利用して、衛生管理計画と(必要に応じて)手順書を準備し
③その内容を従業員に周知し
④手引書の記録様式を利用して、衛生管理の実施状況を記録し
⑤手引書で推奨された期間、記録を保存し
⑥記録等を定期的に振り返り、必要に応じて衛生管理計画や手順書の内容を見直す
この①~⑥を実施していれば、
食品衛生法第50条の2第2項の規定に基づき、「営業者は厚生労働省令に定められた基準(一般衛生管理の基準とHACCPに沿った衛生管理の基準)に従い、公衆衛生上必要な措置を定め、これを遵守している」と見なされるとのことです。

出典元 厚生労働省

HACCPに沿った衛生管理の制度化
https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000662484.pdf

HACCPに沿った衛生管理の制度化に関するQ&A
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000153364_00001.html

チーズ生産事業者向けの「手引書」は?

(写真提供/三良坂フロマージュ様)

<HACCPの考え方を取り入れた衛生管理>であれば、取り扱う食品の特性又は営業の規模に応じて、一般的な衛生管理を基本に、各事業者団体が作成し、厚生労働省が内容を確認した「手引書」を参考に衛生管理に取り組んでいけばいいということになります。

「ナチュラルチーズ製造事業者向け手引書」については、現在、厚生労働省の「食品衛生管理に関する技術検討会」において検討中の「案Ⅷ」が「議事録」とともに下記のホームページ「第26回(非公開開催)2020年12月23日(令和2年12月23日)」に掲載されました。
また、「牛乳・乳飲料製造の衛生管理計画作成のための手引」等、参考になりそうな「手引書」は下記のホームページで公表されています。

◇HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書(厚生労働省HP)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000179028_00003.html

また、こちらのページに厚生労働省・農林水産省等に掲載されているHACCP関連の資料をまとめてみました。
どうぞご活用ください。

だいたいイメージしていただけたのではないでしょうか。

あとは、もう、できるだけ手戻りなく手堅く進めるためには、それはズバリ!!
「<HACCPの考え方を取り入れた衛生管理>の<衛生管理計画書>を作りたいんですが、書き方がよく解らないんです」と、手引書案を持って日頃からお世話になっている最寄りの保健所にご相談に行く。
これが一番確かで近道のように思えます。
(それでもまだ、何かお困りになることがございましたら、一緒に解決策を考えさせてください。その時にはご連絡をお待ちしております。)

微力ではありますが、当サイトからメールでのご相談を受け付けております。
筆者は実際にチーズの生産をしておりません。また、一般衛生管理についても机上の知識にすぎません。このため本当に微力です (^_^;)。
様々な情報をもとに、皆様の現場の実情にあわせて、よりよい取り組みを一緒に考えさせていただくという感じでよろしければご連絡をお待ちしております。
筆者はコンサルではございませんのでご相談いただくのは無料です。